家づくりの計画について
家を建てるということは、生涯に何度もあるものではなく、
初めての経験の人がほとんどではないでしょうか
何十年と末永く暮らす家なので、まず構造的に安心できること、
意匠面での豊かさがあること、実用的な間取りであること、
そして家族の繋がりがあることを考慮して家づくりを考えていきましょう。
個人的には住宅に実用性を追求するだけではなく、感動できるような
空間をつくりあげるほうが、より大切に、愛おしく感じて暮らしていけると
考えており、こうしたことは施主様と共につくりあげていく
共同作業あってのことだと考えます。
毎日の生活を想像して未来のあるべき住宅を考えていきたいものです。
敷地の持つ力
敷地と住宅は離すことが出来ないポジションにあります。
敷地という固有の存在があり、その場の持つ力のようなものを設計者が
出来る限り読み取り、周りの環境や風土も考慮に入れながら
その場(敷地)の有効活用を求めていかなければなりません。
大切な敷地です。住宅設計の原点は、敷地をデザインすることです。
このスタートラインに重点をおき、今後の課題にもしていきます。
設計者が敷地に立ち、考えます。道路状況、駐車場、アプローチ、
庭との取り合い、光の道、風の道、近隣状況や将来この敷地周りでおきうる
可能性など、その場で感じることにより、導かれる可能性が見えてくると思います。
企画型をベースにしたプランニング方法もありますが、
豊かな住居をつくるためには、最初にも述べましたがやはり敷地と住宅という
関係をいかに保っていくかが重要であると考えます。
設計事務所にはベースプランがありません。敷地に合わせるとほぼ企画外の
プランになるからです。
私は建築計画で迷ったら、再度敷地を見に行くようにしています。
そして日照や環境など再確認しつつ、豊かな住まいを実現するため、
敷地をデザインした敷地に根付いた住宅を設計しています。
ご要望について
ご要望は家づくりの骨格となる重要な項目です。
今、抱えておられている問題点から将来の計画まで細かく打ち合わせしていきます。
住宅づくりを始めることとなったきっかけや要因や、現状の不満点、ライフスタイル、
趣味、家に求めるもの、家族とつながるものなど多くのことがあり、
プライベートな部分も聞かせて頂くこともあるかと思います。
同じ住所、同じ家族はありません。家族様々の思いや細かいご希望を
お聞かせ頂きまして、オリジナリティのある住居を構想していく部分です。
ご家族のライフスタイルを知り、実感し、求められていることを
感じ取り住宅内に消化していくべきものです。
施主様と設計者のフィーリングも特に重要であり、共に共有できた時にこそ
より豊かな住宅ができるものと思います。
敷地計画
敷地をどう読み取るかは設計者の技量が問われます。
様々な手立て、手法があり、その中でも最も有効な方法を導かなければなりません。
全体案を決定づけする項目でもあり、毎回、気の引き締まる思いがすると共に、
楽しみでもあり豊かで確実な手法を見出していきます。
敷地内外も含め、多くの情報をより明確に消化して快適な敷地計画としたいものです。
各居室やアプローチ動線からの繋がりも考慮に入れ、利便性も追求していきます。
即時に案が浮かぶ時もありますし、角度を変え再検討にかかる時もあります。
駐車場位置一つだけでも止め方は多くあります。道路からの安全性や
玄関や勝手口への動線など…、他の要素も検討しつつ計画します。
敷地と住宅のバランス、また外観ファサードと敷地外構の関係、周辺環境への
影響など複雑化する中から、キーワードを形へと見出していきます。
日照・採光計画
日照の良い空間は気持ちよいものです。
現況の生活において日照・採光についていかがであるか確認します。
日照はただ開口部を大きく取るだけでは解決しません。
サッシの位置関係や周り近隣の立地条件、夏場、冬場での太陽光線の違い、
各居室の日照有効順位、また位置関係、ゾーニング一つで改善されることもあり、
事前にチェックしておく必要があります。
エアコンで温熱環境を図る場合も高断熱・高気密施工の必要がでてきますが
パッシグデザインとして庇や軒の出・バルコニーを有効利用していくほうが
体への負担も少なくより健全な間取りとなる場合が多く見受けられます
夏場の西日対策や冬場の採光取り込みなど解決策を駆使して対処していきます。
また、北側の日照も配置や近隣状況次第でかなり有効な採光を得ることが出来ます。
反射光なども利用したいものです、道路の照返しは何らかの解決策をしたいものです。
通風計画
風は自然に吹きますが、季節により様々です。卓越風を最大限利用する為にも
風をキャッチできる計画がないと風は家の中に入ってきません。
各居室~住宅全体レベルに至るまで構成が必要となります。
敷地状況によっても風向きは様々です。現況の風向きを教えて下さい。
基本的に風の入口と出口を直線的、断面的に結ぶことが望ましいです。
居室ごとに必要に応じて開口を設けます。困難な場合は温度差を利用して、
上下通風の工夫をしたいものです。
和室等、座っているポジションでは地窓などの効果も期待できます。
冬場の通風は暖気が上昇するため、吹き抜け部のファンなど風の対流をしつつ、
夏場は逆にドラフト効果を利用します。
結露も通風に影響する部分も多く、計画は必要ですが結露の原因として多くあるのが
室内で洗濯物を干すことが挙げられますのでサンルームやサービスヤード
も積極的に取り入れたいものです。
動線計画
動線にはいろんな種類があります。
何十年と暮らしていく間取りであり、動線となりますのでより実用的に
利便性のあるものとしていきます。
その中でも一番重要視するのは家事動線であり奥様が一日に住宅内を歩く
歩数は約7000歩になるとも言われております。無駄のない動線計画を
立てておくことが出来れば、プラン上で通路などのスペースが短縮される
結果となり家事動線もシンプル動線になります。
他には来客動線が挙げられます。来客動線はお客様を迎え入れる動線となりますので、
アプローチから玄関、玄関から和室・リビングへとスムーズに迎え入れる為にも、
裏動線と交錯しないように、プライベートエリアとの兼ね合いも
考えていく必要があるかと思います。
プライベートエリアは家族の生活スタイルに合わせて考慮していきます。
リビング階段での家族のふれあいや、水廻りの位置関係、
ハレとケの部分を明確にするなどがあります。
また他動線として2世帯の場合や昼と夜との動線の違いなどもあり、
敷地・住宅との、かねあい動線も大切です。
収納計画
住宅の平均収納量は床面積の8~12%といわれております。
各部屋、適材適所に収納できることが好ましく、
快適に暮らしていくためにも大切なことです。
収納する物の寸法を把握して無駄のないように計画することで
スペースの有効利用が出来ます。
収納方法も多岐にわたり、小屋裏収納・ロフト・壁面収納・床下収納・天井利用
階段下収納・外部収納など可能な限り確保して充実した収納計画を図っていきます。
現状においての収納量、品目を確認して、本当に使うもの、使わないものを
再確認してみてはいかがでしょうか?
将来、物は増えてくるものです。現状の生活における物を考えていきましょう。
将来計画
何十年とまた世代を繋いでいく住まいとなります。
将来ライサイクルが変化し、そうしたことが間取りに影響してくることは、
あらかじめ予想しておきたいものです。
家族構成や生活スタイルの変化は十分考えられる要素だと思います。
小さなお子様が大きくなって独立する。またご両親様との同居、
そして独立したお子様が帰ってこられて2世帯住宅となっていくなど、
可能性はあるかと思いますのでこうしたことも最初の間取りの中でどこまで
考慮していくかを、検討項目の一つとして用意されてみてはいかがでしょうか
バリアフリー対策も求められます。
敷地と道路、住宅内外との関係、スロープや通路幅、高低差や安全性、
手すりの設定や将来のための下地補強、EVスペースの確保や各部材の選定など、
将来も暮らしやすい住宅とするためにも事前準備しておきたいものです。
改装や増改築も考えられ、住宅と一緒に成長していくことの意義を忘れず、
メンテナンスも含めて大切に暮らして頂ける住まい計画としたいものです。
資金計画
絵に描いた餅のように実現しない建物には魅力を感じる事はできません。
個人が一生のうち購入する商品の中では一番金額の大きな物の部類に入ります。
銀行ローン借入等のご相談も承っており、無理の無い資金計画も
余裕を持つ住まい計画につながります。
様々なご要望、家庭事情がある中で、ご要望優先で計画を進めた結果、
コスト面で完全にOUTになる場合もあり、予算に見合うバランスの良い
価値ある住まいであることも重要です
建築計画と資金計画が噛み合うようにコストコントロールも同時に進めていきましょう
少し話はそれますが、コスト面や施工面ですが、一般的なハウスメーカー
(設計施工1式管理)と比べると建築士事務所は建築の専門的な立場をとり、
施主様の代理人として唯一、施工者との間に入ることが
出来るポジションを取っています。一般的なハウスメーカーは利益率、マージン面、
下請け施工方式など諸問題も多く抱えており、会社都合の施工、工期、金額、考え方に
偏る場合も多くあり、専門的な目線で公正に建築を見定めることが難しくなります。
建築士事務所は適正な住まいを目指し、不安、不満を取り除いていく代理人の立場でもあります。